ライブハウスは配信ライブ会場になっていくのか?
今ライブハウスがすべきことは何なのか?
本日2020年6月12日、あるライブハウス関係者のブログ記事が話題となりました。
(直接面識がない方なのでリンクなどは控えさせていただきます)
※以後、そのブログ記事のことを「例の記事」と表記させてもらいます。
この記事を書いている恭平 a.k.a こども社長( @kyoopees )は京都でライブハウスGROWLYや音楽スタジオAntonioなどを運営している会社の代表です。
コロナ禍で甚大な被害を受け、損害の補填方法を考えながら、ライブハウスを残すために日々悪戦苦闘しています。
今回は
ライブハウスは「配信ライブは代替にならない」と主張すべき
という主張に対し、私が感じた見解を書こうと思います。
決して、例の記事や本人を否定/批判するつもりは一切ありません。
「人が集い、音楽を楽しむ場所を守りたい」という最終ゴールは一緒だと感じています。
例の記事を読んで、あくまで個人の考えを文章に起こしたいと思っただけなので、ご了承ください。
ライブハウスは「配信ライブは代替にならない」と主張すべきか
例の記事を何度も読み返しました。
例の記事で主張されているのは
「従来の集客ライブ」が「配信ライブ」に完全に取って代わることはないと主張すべき
ということだと読み取りました。
そしてそれを行政に伝えよう、という主張だと感じました。
配信ライブがダメというわけではない
一読した時は、「配信ライブを辞めろと主張してるのかな」と勘違いしましたが、決してそうではありません。
「配信ライブが従来の集客ライブに完全に取って代わったから、もうライブハウス業界は安心だな」と行政に思わせてはいけない、という主張だと感じました。
この主張には私も概ね賛成です。
しかし、地方のライブハウスを運営する身にとってそれは、すごく難しいと感じました。
理由は大きく2点ありまして、
1,地方在住なのもあり、行政に直接訴えかけるコネ・時間がなく、県をまたぐ移動も自粛要請されているのでなす術がない
2,行政に頼りすぎるのはよくないと考えている
1については、今までの経営方針のせいと言われればそれまでかもしれませんが、特に東京以外のライブハウスの経営者/店長で、行政と繋がってる人はほとんどいないのではないでしょうか。
#SaveOurSpaceには署名しましたが、それ以上の活動を、現在の経営と並行して行なっていくのは困難だと考えます。
2については後述します。
配信ライブに乗れないライブハウスはどうするか
例の記事でも「老舗の小さなジャズ箱」は配信にフィットしづらいという表現もありました。
すごくわかります。
"ライブハウス"という括りの中でも業態は様々です。
僕が運営するライブハウスは主に"アーティスト"目当てでお客さんが来る傾向にあります。
対して毎日箱バンが演奏するようなジャズ専門ライブハウスなどは"その場の空気"を目当てでお客さんが来る傾向にあります。
なので"その場の空気"を売りにしている業態が配信ライブにフィットしやすいかと言えばそうでないと思います。
しかし逆にそれはビジネスチャンスでもあり、対応できる可能性はあると思います。
何もしないよりは、配信ライブに活路を見出すのも悪くないと思います。
(もちろん配信ライブという選択肢を取らなくてもいいと思います。)
そしてそのあとの文章で
ライブハウス/クラブは、新たな才能を見出す場所で、知名度のないアーティストの有料配信を誰が観るでしょうか。
の部分は、本当に共感しました。
私が運営するGROWLYは本当に、学生バンドやオリジナル作りたてのバンドが多く出演するライブハウスです。
そんなバンドマンは必死にチケットを売り、ちょっとしか売れずに数人しかいないライブハウスで切磋琢磨するところから始まります。
(ノルマ問題に発展しそうですが割愛します。笑)
まさに今、そんな彼らの有料配信をいかに販売していくかということは大きな課題になっています。
この問題は「コロナにより客足が減った飲食店が、テイクアウト販売をするかどうか」という問題に置き換えればわかりやすいと思います。
テイクアウトしたところで売上をあげられない飲食店もあれば、逆にうまく売上をあげられる飲食店もある。
テイクアウトじゃ店の味を出せないからと頑なにやらない飲食店もあると思います。
そして今まさに、テイクアウトやデリバリーに対する補助金なども存在します。
(デリバリー販売の手数料の一部負担など)
だからと言ってこれは「全ての飲食店をテイクアウト専門店にしよう」という行政の思惑があるとは考えにくいです。
コロナによって減った売上をどう補填していくか、その具体的な方法を試す場合は補助金を出しますよ、という具合だと思います。
その具体策が、飲食店はテイクアウトであり、ライブハウスはライブ配信、というわけです。
配信ライブへの支援は無用なのか
行政は"コロナ禍において、生の芸術やエンターテイメントのビジネスモデルとして、配信が成立すると考えている"かどうかは、私にはわかりません。
直接話を伺うこともできないので、知る由もありません。
ただ、配信ライブへの支援は、政府ができる策として素晴らしい方法だなと思っています。
コロナ対応の副産物として、支援を受けて用意できた配信ライブの設備は、アフターコロナでも生きるからです。
人を集めたくても集められない今の時期、できることといえば配信ライブくらいしかないからです。
それを行政は理解してくれてると感じています。
(配信ライブ以外にも方法は模索して実行しています。一案あれば教えて欲しいです。)
なかなか特定の業種だけに金銭補償を行うのが難しい中、配信ライブに目をつけ考慮し、そこに補助金を出してくれてることはすごくありがたいことだと感じています。
行政に訴えるべきなのか
僕はこれはNOだと感じています。
元来ライブハウスはサブカルチャーです。
街の隅っこで、ライブハウスを理解できない人たちとも共存してきました。
なのでいただける支援は受けつつも、生き残りの方法を考えて模索していく方がいいと考えています。
なぜなら行政から手厚い支援を受けるためには、今までもこれからも行政の指導に完全に従う必要があるからです。
(コロナ対策だけでなく)
行政にライブハウスの業態を完全に理解させるのは不可能であり、"野暮"だと思います。
もし行政の方針に完全に従った場合、アフターコロナでもキャパ制限や遊び方制限など、やりづらくなってしまうでしょう。
ライブハウスやクラブには独特の「カルチャー」が存在し、ギリギリの存在なのです。
なので僕個人的には、
新規配信への支援が主眼ではなく、間引き営業/縮小営業への補填
を強く求めるべきではなく、現状できる方法を続けていく方がいいと考えます。
(もちろん業態に適用できる補償などが出れば随時いただく方針で)
行政のコロナ対策指導に"なるべく"添いつつ、コロナ収束まで待つのが得策だと考えます。
まとめ
ということで今回は、ライブハウスは「配信ライブは代替にならない」と主張すべきかという議題でお送りしました。
僕も「従来の集客ライブ」が「配信ライブ」に完全に取って代わるとも思ってないし、そうなってほしくないと思っています。
しかしそれを主張したところで、配信ライブはやっていかなきゃいけないし、これ以上行政に介入されるのもよくないと考えています。
冒頭にも書きましたが、あくまで例の記事や本人様を否定/批判するつもりはありません。
個人的な意見を書かせて頂きました。
一番大事なのは「アフターコロナまで場所と気持ちを保たせること」だと思っています。
それは例の記事の筆者だけでなく、全音楽関係者・アーティスト・音楽ファンの共通の願いだと思います。
「配信ライブなんて観たくない、生じゃないと意味がない」
という意見がある一方、
「配信ライブだと(何らかの理由で)家から出られないけど観れるのでありがたい」
という意見もあります。
全員を満足させるのは不可能ですが、場所と気持ちを保たせるためにはやらないよりやった方がいいと考えています。
やった方が、アーティストも裏方も、それを観る人も炎を燃やすきっかけになるからです。
関係者は各持ち場で頭を悩ませ、今までではやってこなかったことにも挑戦し始めています。
配信ライブだけでなく、YouTubeチャンネル開設、グッズ販売、クラウドファンディングなど。
ライブハウスに人が集まれば、周りの飲食店や交通機関なども潤い、雇用の創出にもなります。
エンターテイメントが収益を上げられる世界こそ、真の好景気だと思います。
もちろんコロナは悪であり、早く元通りの世界に戻って欲しいです。
これを機にもっといいエンターテイメント業界になって欲しいなと切に願います。
そのために今できることを考え、実行していきたいと思っています。
関連記事です。
現時点で僕の立場で受けられる支援制度をまとめました。(期限が過ぎてるのもあります)
この頃はイベント自粛なんて本当に理解できなかったけど、今じゃ当たり前になってしまってますね。
2020年版も作るべきでしょうか、、、
続きはWebで。もしくは配信ライブで。