こども社長の魔法のブログ

(株)ケイピーエス代表取締役角田恭平による音楽・ライブハウス・人生の読み物

「ライブハウスにライブの音資料を送るのはイベント2週間前まで」という法律を作るべき理由

ライブハウスの人間は、ロボットでも、奴隷でもない。

人間である。

 

先日、こういうツイートをしました。

コチラのツイートが結構反応あったので、詳しく解説したいと思います。

 

この記事を書いている恭平 a.k.a こども社長( @kyoopees )は京都でGROWLYというライブハウスを運営しています。

ライブハウスの他にも飲食店や音楽スタジオ、レーベルなどを経営してるのですが、経営の部分の仕事と並行してライブハウスの仕事もやっています。

ライブハウスではイベント制作(ブッカー、ブッキングマネージャーとも言います)を担当しています。

 

そんな中で、普段から疑問に思っていたというか、業界の通例を変えたいなって思ってたことが、先日のツイートの内容です。

ツイッターの140文字では伝わらない部分があるかもしれないなと思い、記事にしてみました。

 

バンドマンやライブハウスなどの音楽関係者、

ライブハウスの裏側まで知りたい音楽ファンは是非最後まで読んでみて下さい。

※専門用語とか、ライブハウススタッフしかわからないニュアンスも含みますが、ご了承下さい。

 

レディゴォ!

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動画版もあります!

今回は先に動画を出して、その後にこの記事を書いています。

youtu.be

 

 

「ライブハウスにライブの音資料を送るのはイベント2週間前まで」という法律を作るべき理由

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イベント制作という仕事は、イベントの出演バンドをオファー(ブッキングとも言います)したり、持ち込みイベントの窓口担当したりします。

一般企業で例えるなら営業職ですね。

 

これはライブハウスによって違うので一概には言えないですが、制作担当の他には音響、照明、バーカン、受付スタッフ、事務スタッフ等がいます。

僕は音響、照明は担当しません。

(技術も知識もないので、それらに振る時間を敢えて作らないようにしています。)

 

ライブハウスによっては、音響と照明を一人の人が担当したり、場所によっては店長さんが制作・音響・照明を一人で担当してるところもあります。

逆に、音響担当が一日2〜3人(メイン、モニター、補助)いたりするところもありますので、ライブハウスによって様々です。

 

なので一概に「ライブハウスの役職分担」という言葉で括るのは難しいです。

今回は、GROWLYのような役割分担がされてるようなライブハウスという前提で進めていきます。

 

前提:全バンドが音資料必要だという話ではない

「ライブハウスにライブの音資料を送るのはイベント2週間前まで」と書きましたが、

「出演する全バンド、音資料を送って下さい」という意味ではありません。

 

音資料が絶対必要というわけでは無いです。

 

あくまで、音資料を「送る場合は」という前提で読み進めて下さい。

 

音資料とは

まずツイートにある”音資料”という言葉ですが、これは

ライブで演奏する曲に関する資料

(音源、セットリスト、セット図、回線表、音響要望、照明要望など)

のことを指します。

「本番でこの曲順でこの曲をやるので、曲を聴いて準備しといてくださいね~」ってやつです。

 

一つ一つ解説すると時間がかかるので今回は省略しますが、

名古屋APOLLO BASEの木田くん( @from__suke )が最近、詳しい説明をブログで最近上げてたので、リンク貼っておきます。

ライブする時に送る「資料」って何送ったらいいかわかんねえよ、もしくはちゃんとやれてるか自信が無えなあ、ってバンドマンのための色々

詳しく知りたい人はこちらを読んでみてください。

 

簡単に言うと、ライブの本番をよりバンドの理想のものに近づけるために必要な資料です。

バンドのスタイルにもよりますが、ラフなライブの方がかっこいいバンドとキメキメなライブの方がかっこいいバンドに分けるとするなら、キメキメな方がかっこいいバンドはこの資料を作った方が、ライブハウススタッフとのやりとりがスムーズになる場合があります。 

 

2週間前という期間にした理由

2週間”という期間にした理由は、問題のツイートのリプで書いてます。

これを順に解説していきます。

 

まず言っておきたいのは、2週間というのはある程度余裕を持った期間です。

1週間前だったらできない、というわけではありません。

ライブハウスが余裕を持って対応するための目安として、2週間という期間が欲しいという主張をしています。

 

店長や制作担当にも休日がある

この音資料を受け取るのは主に店長や制作担当の仕事です。

そんな店長にも制作担当者にも、休日はあるべきです。

(ライブハウススタッフ休まなすぎ問題に関してもまた別の機会で詳しく書きたいと思っています。)

 

音資料を送った日に必ず出勤してるとは限りません。

もし音資料を送った日が休日であれば、確認する日は翌日以降になり、そこでタイムラグが生じます。

 

資料に問題がある場合、指摘→訂正で3日は必要

例えば、送られてきた音源データが壊れていて開けない、歌詞が文字化けしてる、回線表がライブハウスのPA卓の回線数を超えているなど。

送られてきた資料に問題がある場合があります。

 

制作担当者が受け取ってすぐ、この問題に気付いて送り返す時もあれば、

気付かずに音響・照明スタッフに指示した後、

「このファイル開けませんよ」って言われるときもあります。

 

そのようなやり取りがありつつ、先方に送り返して、訂正してまた送り返してもらうまで往復3日くらいかかる場合が多いです。

 

シフトの時間変更は2週間前までが妥当

もし音資料が届き、その確認作業をシフト内で行う場合はシフトの時間変更(追加)が必要です。

このシフトの時間変更(追加)を支持できるのも、2週間前が妥当だと考えます。

 

音資料が送られてくるかどうかは、送られてくるまでわからないんです。

これもこの問題を複雑化させています。

 

ワンマンやツーマンくらいなら、送ってくるだろうなっていうのがある程度予想できるし、音響照明スタッフからも「いついつの資料って来てますか?」「あ、まだ来てないから聞いとくわ」っていうやり取りができます。

ただGROWLYみたいなサイズ(キャパ150~200くらい)の箱は、一日に5~6バンド出る日の方が多いです。

むしろワンマンイベントは月に1回あるかないか。

5〜6バンド出演する日は、音資料が送られてこない日のほうがほとんどです。

 

そんな5~6バンド出演の日に出るバンドから、イベント前日とかに音資料が送られてくる場合があります。

そうなった時に、「明日、出勤時間より2時間前に出てきて音資料確認してもらえる?」っていきなり指示するのは、管理職としてどうなのかなって思います。

 

シフトの時間変更は、余裕を持って伝えたいです。

 

音響・照明スタッフも、対応可能な場合もありますが、不可能な場合もあります。

もう既にお酒飲んでるとか、出勤時間まで別のバイト入れてるとか。

 

なので、シフトの段取りをするためにも、2週間前が妥当だと思ってます。

 

音響と照明は勤務時間=実務時間。時間を新たに割く必要がある

音響・照明スタッフは、基本的に勤務時間=実務時間です。

出勤から退勤まで、当日のイベントに対する作業をするのが普通です。

 

なので、音資料を確認する作業が音響・照明スタッフの「実務時間外」になります。

 

音響・照明の両スタッフが確認する必要がありますが、特に照明スタッフの方が時間かかります。

 

音響スタッフは、セット図と回線表を確認さえして問題なければ大丈夫な場合が多いです。

ライブの音を音源に近づけたいという要望があっても、数分あれば把握することができます。

ピンポイントな音響要望(例:2曲目のBメロで深いリバーブをかけて欲しい等)については、リハーサル時間でやる場合が多いので、覚えるまで音源を聴き込む必要はない場合が多いです。

 

資料を確認→音源を聴く→当日の資料作成までに1~2時間必要

特に時間がかかるのは照明スタッフです。

照明スタッフは、曲をイチから聴いて、曲を覚える必要があるからです。

ある程度でも良いけど、曲の構成などは把握しておかなければいけません。

 

仮に1時間のセットリストなら、1回確認するだけで1時間かかります。

覚えるためには最低2回は聴くと思うので、聴くだけで2時間必要です。

そしてそれを元に資料を作るとするなら、全部で約3時間はかかります。

 

1時間のセットリストに対して、3時間はかかるのです。

 

音響・照明スタッフは、基本的に勤務時間=実務時間になるので、音資料の確認は必然的に実務時間外になります。

これが勤務時間外(給与の対象にならない)のであれば、おかしいと僕は思っています。

 

6バンドあれば6時間必要

6バンドが出演する日に、6バンド全てが音資料を送ったとします。

そうなれば、確認作業は単純計算で6時間かかります。

 

6バンド出演する日に、「自分達のライブをかっこよくして欲しい」っていう気持ちはわかります。

それは大切なことです。

でも6バンド全部がそれを希望して音資料を送ったとしたら、全部確認するためには6時間かかります。

それを全て処理する時間を作るためにも、(送るなら)2週間前に送りましょうっていう話です。

 

バンドが求めてるニュアンスを汲み取るのが難しい 

ツイートにはありませんでしたが、最後に一つ付け加えさせていただきます。

 

音資料を送ってくれるバンドも、線引が曖昧な場合が多いです。

「よければ聴いといて下さい」という一文が添えられて送られてくる場合があります。

そのニュアンスをライブハウスがどう解釈するのかが難しいです。

 

ライブハウスによっては、本気で聴き込んで完璧に覚えてくれるスタッフがいるかも知れませんが、(時間的・人員的な理由で)それができないライブハウスもあります。

もちろんバンドとしては、聴き込んだ上で完璧に対応してくれた方が嬉しいです。

それは僕もちゃんと理解しています。

 

しかし、勤務中の態度・技術・能力の良し悪しが評価に繋がることは当然だ思いますが、

時間外労働に関する評価なら間違ってると思います。

 

ちょっと前に話題になった、保育士さんの持ち帰りサービス残業の問題に似てると思います。

出勤中の、児童や保護者との有意義な時間を過ごすために、自分の時間を犠牲にして準備をしていることが社会問題になっています。

 

だから、音資料の確認は勤務時間内に組み込むべきで、そのためには2週間前に送ってほしい、という主張に繋がります。

 

まとめ 

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項目に分けて説明しましたが、総じて「音響・照明スタッフが自ら時間作るべきだ」という常識を変えたい、というのがポイントです。

 

もし音響・照明スタッフが自らその意見を言うのであれば、雇ってる側もそれをやめろとは言いにくいです。

 

ただ、あくまで音資料の確認は「仕事上の指示」です。

「給料なしでもやります」というやりがい搾取を、管理職から求めることはやってはいけないと思っています。

 

今回の主張で、バンドマンやマネージャーからは「2週間も前にセットリスト(曲順)を決めるのは難しいよ」っていう意見が出ると思います。

それはごもっともです。

 

だから、2週間前ではなくても、できる限り早めの送付をお願いしたいです。

2週間前だと超助かるけど、それより遅くてもいいからなるべく早めにお願いします、って感じです。

 

僕は今後も音楽業界・ライブハウス業界が生き残っていくためには、社会情勢の変化に対応していくことが必要だと思っています。

「音資料の確認は、音響・照明スタッフが自ら無給でやるもの」という常識が残ってるようでは、今後の生き残りは難しいと思っています。

 

ライブハウスではもちろんいいバンド、いい音楽が生まれることが大事です。

しかしその場所で働く人の環境も良くしていくことで、出演者やお客さんにとってもより良い環境を維持できると思っています。

そうすれば、良い一日を作り続ける事ができると思います。

 

ライブハウスが、この先ずっと、良い場所でありますように。

 

 

関連記事です。

ライブハウスのスタッフの態度について言及した記事です。 

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ちょっと難しい言葉を使いすぎたので、入門編。 

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その地域によって、ライブハウスの常識は違います。

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続きはWebで。もしくは現場で。