もう当日料金無くして全部前売料金で良くない?
皆さんはライブハウスの入場料に"前売り価格"と"当日価格"があるのはご存知でしょうか?
例えば
前売り2000円(D別) / 当日2500円(D別)
という感じで、500円の差がある場合が多いです。
この記事を書いている恭平 a.k.a こども社長( @kyoopees )は以前、コチラの記事↓
で、前売り料金と当日料金がなぜ違うのかを論じました。
料金が違う理由を知ることで、価格差の存在意義を知ってもらいたかったので書きました。
この記事を書いたのはちょうど一年前で、今も考えは変わっていません。
しかしもしかしたら、その考えがもはや古いのかも知れません。
そこで本記事では、前売りと当日の料金差は本当に必要なのかを論じていこうと思っています。
レディゴォ!
当日券料金を無くして前売り券料金だけにしたら幸せになれるのか
今回の議題の発端は"もうみんな前売り料金でいいんじゃね?"だと思うので、当日料金が無くなり、前売り料金に統一されると仮定して話を進めます。
本来であれば、当日価格が本当の価格なのでそちらに統一するというのが正しいかも知れませんが。。
前売/当日の料金差はもはや崩壊している?
先日、私のYouTubeチャンネルにも出演してもらった東京のライブハウス、四谷アウトブレイク佐藤氏( @boone4649 )が問題提議をなさいました。
【教えてくれ】仮にブッキングライブの当日券¥500アップという(ほぼ崩壊しているけど)システムを無くして料金同一、その代わり予約して入場してくれた人(各バンド先着何名とか)には特典あげるよ!システムだったら何が欲しいっすか?予算あんまりかからないのが嬉しい。リプで教えてっ!!! pic.twitter.com/QVwYeEGUHm
— 佐藤boone学@四谷アウトブレイク店長 (@boone4649) March 28, 2019
東京と京都、離れてるとは言え同じくライブハウスを経営してる身として、共感できる部分はあります。
当日料金の出番が少なすぎるせいで、若手バンドが初企画で「前売りと当日一緒の料金でいいんじゃない?」ってなってしまうのを受けて私も先述のブログ記事を書きました。
前売り料金と当日料金は違うから意味があるのよ、当日料金が正規の値段で、前売料金は割引価格なのよ、と。
しかし言い換えると、そう説明せざるを得ないくらい、前売/当日の料金差は崩壊し始めていたのかも知れません。
当日券料金で来たらチヤホヤされるのか?
佐藤氏のブログにも言及が有りました。
ブッキングライブにおける前売り料金と当日料金のお話 - 今夜、四谷の地下室で。
"当日券料金で来た方がチヤホヤされるよね"問題。
これはまたニュアンスが複雑なのですが、私は理解できます。
本来は前売り予約を入れるような間柄(常連客)で有りながら、(敢えてか偶然か置いといて)予約を入れずに当日券料金でライブに行く
↓
「えっ、予約なかったから来ないと思ってたのに来てくれたんだ!ありがとう!」
という感じです。
アーティスト側も、サプライズ感が増して嬉しさが増す場合もあります。
佐藤氏の言い分では、"本来では予約したお客さんの方がチヤホヤされるべきではないか"と。
しかしこれに対して私の意見は、
・前売り予約をしたお客さんは500円割引という特典を受けている
・当日料金のお客さんは割引されない価格(前売りより500円割高)でチヤホヤされている
ということで均衡は保たれているのではないかとも思います。
(もし本当に当日券の方がチヤホヤされるのであれば)
当日券料金を無くして予約無しor予約有り(特典付き)にする弊害
コチラの記事で↓
料金が安くなることにより、お客さん側の予約のメリットを作り、予約を促す
ということを論じました。
なので今回の佐藤さんの提案のように、予約のメリットが"割引"でなく"特典"であれば、確かに前売/当日の料金差を作らなくてもいいのかも知れません。
例えばチケット料金が2000円(D別)だった場合、提案通り特典をつけるならば、
・予約してない人→2000円(+D代)
・予約してる人→2000円(+D代) *特典付き
となります。
しかし、特典を付けるには様々な弊害があると考えます。
特典を作る経費等の負担がかかる(サービスにしても同様)
グッズを作る場合は、安価だったとしても経費はかかります。
今回の提案の場合、今までの前売料金に特典をつけるので、
売り上げは変わらず経費が上がるので、"実質値下げ"状態となります。
となると、あまり原価が高くなってしまうようでは負担が増えるばかりです。
対してサービスだったら原価はかかりません。
例えば、「肩もみ10分」とか「荷物預かり」等の案が出ました。
しかしこれも、見えない"人件費"や"場所代"がかかります。
お金が直接出ていかないにしても、バンドやライブハウスの負担が増えます。
特典を考える手間がかかる
経費は目に見えるものですが、考える時間やアイデアも大変です。
料金は前売り価格に統一しつつも、今までのように500円割引と同等の価値が必要です。
なので500円割引に相当するようなモノを考えなければいけません。
そして、それがずっと一緒というのも、常連が予約をしなくなることに繋がってしまします。
もしステッカーが特典だったとしたら、月1回ライブに行った場合、1年間で12枚も溜まってしまいますね。
そうならないように、常にアイデアを出さなければいけません。
特典が欲しくない人は予約をしなくなる
アーティストがひねり出した特典が、全てのお客さんが欲しいと思わない場合もあります。
何回も行く人にとっては飽きてしまうかも知れないし、上述したように経費をあまりかけられない特典はあまり質のいいものではないかも知れません。
「肩もみされるのもちょっと、、」と遠慮する人も出てくるかも知れませんね。
すると、"予約しなくてもいいか"という人が出てきてしまいます。
こうなってしまえば本末転倒です。
予約者を増やしたいのに経費やアイデアをひねり出したのに、予約をしない人が増える。
「集客具合の把握」や「ソールドアウトの告知」が打ちにくくなります。
予約の恩恵は、来場者もアーティスト(主催者)もwin-winでなければいけません。
結論:前売り/当日料金の制度は無くせない
個人的見解は、前売り/当日料金の制度は無くせないと思っています。
前売りのメリットが特典だけになると、その特典を"オトクだ!予約しなきゃ!"って感じるかどうかは人それぞれです。
(特にソールドアウトにならないようなブッキングライブのお客さんは顕著にそうだと思います。)
人間誰しもが平等に"オトクだ!"と感じるのは、やはり500円割引ではないでしょうか。
なぜなら、予約というアクションは、それなりにめんどくさい行為であり、予約するメリットはそれなりにないとダメだと思うからです。
もし本当に料金差をなくすのであれば、
・予約した人の全てが平等にメリットだと感じれる
・今までの500円引きに相当する価値
・手間や原価をかけた以上に返ってくる集客結果
が必要だと思います。
個人的には、「現在の制度を上回るシステムが見つかるまでは現状維持」という見解です。
まとめ
今回の議論の前提として、"ソールドアウトしないようなイベント"というものがありました。
ソールドアウトしないようなライブだからこそ、一人でも多く来て欲しいという想いがあると思います。
それはもちろん理解できます。
しかし、ソールドアウトしないようなイベントだからこそ、逆に、
・しっかり予約を取ること
・予約の数が少なければ告知や集客を頑張ること
・予約をした人は(なるべく)キャンセルのないように来場すること
これらが大事だと思います。
反対に、ソールドアウトする前提のライブだと、当日料金の設定はもしかしたら要らないかも知れません。
なぜなら、予約しないと入れないからです。
ライブハウスのキャパ数に応じた人数の予約が来たら締め切るから、
"そのイベントに参加できる"
という、ハッキリとしたメリットが生まれるからです。
今回は私の意見としては「現状維持」を提案することになりましたが、"既存のシステムに疑問を持ち、その打開策を考えること"はとても大事なことだと思います。
そうすることで、文化が発展します。
なので、今回の議論の先に進むことが、今後のライブハウスを良くすると思っています。
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